4.営業キャッシュフローの作り方(貸倒損失・貸倒引当金がある場合)

(2)貸倒れた場合(貸倒損失で処理した場合)

(1)では順調に資金回収が行われていることを前提にしていましたが、売掛金や受取手形の場合貸倒れるケースが出てきます。

売掛金が貸し倒れて貸倒損失で処理した場合、会計上の仕訳は以下のようになります。

(借)貸倒損失     100  (貸)売掛金      100

この貸倒損失という科目は資金の流出を伴わない費用(いわゆる非資金費用)です。

このことからキャッシュフロー計算書上、貸倒損失という独立科目を用いてキャッシュの加算として表示するような感じがするかもしれません。しかしながら、営業活動に係る資産及び

負債に関連して発生した非資金項目は独立表示をしないというルールになっていますので、

キャッシュフロー計算書上、貸倒損失という独立科目を用いてキャッシュの加算はいたしません。

ではどうするかといえば、実は①の処理と同じように期末売掛金が前期末売掛金に対して増加していればキャッシュフロー計算書のマイナス、減少していればプラスと処理したします。

非資金費用の発生する貸し倒れと通常の資金回収を同じ様に処理するというのが不思議な感じがするかもしれませんが、以下の図からわかるようにキャッシュフロー計算書の出発点となる損益計算書の税引前当期純利益はすでに貸倒損失をマイナスした数字となっていますので、貸し倒れによる売掛金の減少を資金回収があったときと同じようにキャッシュフロー計算書のプラスとしても全体としてのキャッシュの動きは発生しないということになります。

損益計算書

貸倒損失      100

税金等調整前当期純利益 △100

損益計算書が上記のような場合、キャッシュフロー計算書は以下のようになります。

キャッシュフロー計算書

税金等調整前当期純利益  △100

売掛金の減少高      +100

0

貸し倒れによる売掛金減少に伴うキャッシュの動きがなしとなります。

(3)貸倒引当金(営業債権に係る貸倒引当金)

売掛金の前期末残高が200、当期増加額が①350、回収が②100、貸倒れが③50で  当期末残高が400、当期増減額が△200とします。

また、前期末残高200に対し10%の貸倒引当金が設定されており(貸倒引当金 20)、当期の50の貸倒れにに対し20を充当、残りの30については貸倒損失で費用計上、当期末残高の400に対し10%の貸倒引当金が設定されている(貸倒引当金 40)と仮定します。

以上の設例で考えますが、それぞれの会計上の仕訳とそれに対応するキャッシュフロー仕訳をみていきたいと思います。

取引①(借)売掛金   350       (貸)売 上   350

キャッシュフロー仕訳としては売掛にて売上を計上したが、資金の回収(流入)がないため当期利益のマイナスとします。

(C/F仕訳)

(借)売掛金の増加額(C/F)350   (貸)売掛金   350

取引②(借)現預金   100       (貸)売掛金   100

キャッシュフロー仕訳としては前期末売掛金のうち100が資金回収(流入)されたため、当期利益のプラスとします。

(C/F仕訳)

(借)売掛金   100       (貸)売掛金の減少額(C/F) 100

取引③貸倒れた売掛金のうち貸倒損失で処理した部分のみ考えます。

(借)貸倒損失   30       (貸)売掛金      30

キャッシュフロー仕訳としては売掛金のところでふれたように通常の売掛金の減少と同様に処理します。

(C/F仕訳)

(借)売掛金    30       (貸)売掛金の減少額(C/F)  30

とりあえず、この状態で損益計算書とキャッシュフロー計算書をみると以下の様になります。

損益計算書

売 上   350

貸倒損失   30

当期純利益 320

キャッシュフロー計算書

当期純利益    320

取引①売掛金の増加額 △350

取引②売掛金の減少額 +100

取引③売掛金の減少額 + 30

営業活動によるキャッシュフロー 100 ←当期、現実に増加した現預金の金額に一致

上記のキャッシュフロー計算書は今回の説明をわかりやすくするために①②③の取引別に売掛金の増加額及び減少を表示してありますが、実際は以下のように純額で表示します。

キャッシュフロー計算書

当期利益       320

取引①~③売掛金の増加額   △220

営業活動によるキャッシュフロー100

④⑤次に貸倒引当金の処理について会計上の仕訳とそれに対応するキャッシュフロー仕訳をみていきたいと思います。

取引④(借)貸倒引当金     20   (貸)売掛金     20

取引⑤(借)貸倒引当金繰入額  40   (貸)貸倒引当金   40

費用として貸倒引当金繰入額が40発生していますが、資金の流出を伴わない費用です。したがって、キャッシュフロー計算書上、取り消す必要がありますが営業活動に係る資産及び負債に関連して発生した非資金項目に独立表示しないというルールになっていますので、売掛金及び貸倒引当金の増減を処理する中で、自動的に調整されるようにいたします。

取引④(借)貸倒引当金       20   (貸)売掛金        20

売掛金を貸倒引当金で処理した仕訳を分解して減少した貸倒引当金をキャッシュフロー計算書上そのまま貸倒引当金の減少額として振り替えます。また、売掛金の減少もそのまキャッシュフロー計算書上売掛金の減少額として振り替えます。

(CF仕訳)

(借)貸倒引当金の減少額(C/F) 20 (貸)貸倒引当金      20

(借)売掛金         20  (貸)売掛金の減少額(C/F)  20

⑤(借)貸倒引当金繰入額   40  (貸)貸倒引当金      40

(CF仕訳)

(借)貸倒引当金      40  (貸)貸倒引当金の増加額(C/F) 40

損益計算書とキャッシュフロー計算書をみると以下の様になります。

損益計算書

売 上      350

貸倒損失     △30

貸倒引当金繰入額  △40

当期純利益    280

キャッシュフロー計算書

当期純利益         280

①~③売掛金の増加額    △220

④売掛金の減少額    + 20

④貸倒引当金の減少額   △20

⑤貸倒引当金の増加額    40

営業活動によるキャッシュフロー 100 ←当期、現実に増加した現預金の金額に一致

上記のキャッシュフロー計算書を純額表示にすると以下の様になります。

当期利益     280

売掛金の増加額    △200 ←売掛金の期首と期末の増減差額の金額①~④

貸倒引当金の増加額    20 ←貸倒引当金の期首と期末の増減差額の金額④⑤

営業活動によるキャッシュフロー 100

以上からわかるように営業債権に関しては貸倒が発生していたとして、その取引を貸倒引当金で充当又は貸倒損失で処理したにかかわらず、期首と期末の増減差額をそのまま振り替えれば、自動的に調整されます。

また、貸倒引当金についても期首と期末の増減差額をそのまま振り替えれば、自動的に調整されるのです。

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